専有部分と共用部分
マンションには専有部分と共用部分しかない!?
分譲マンションである建物(区分所有建物)は、専有部分と共用部分から成っており、それ以外の部分はありません。数式に例えると次のようになります。
区分所有建物 = 専有部分 + 共用部分
共用部分には数種あり、この共用部分はそのうちのひとつです。
換言すれば、区分所有建物のうち専有部分以外は全て共用部分である、となります。なお、専有と専用・占有、共用と共有、これらはそれぞれ異なる概念であり、例えば「共有部分」というものは区分所有法には存在しません。
専有部分とは
区分所有権の目的となる建物の部分のことです。
「マンションを買った」というときの購入した部分(例えば101号室)であり、個人の所有物となる部分です。
区分所有法では「構造上・利用上、独立している部分」と定められていますが、この他に「その部分を個別に所有する」という客観的な意思が伴ってはじめて専有部分となります。この点が分譲マンションと賃貸マンションの違いです。
マンションでは、管理規約によって専有部分が定められます。専有部分の定めがされることにより、共用部分が明らかになります(上述の数式を参照)。
共用部分とは
躯体やエントランスホール、外廊下、階段室、エレベータ室など専有部分ではない建物の部分(上述の数式にいう共用部分)と、エレベータの籠や受水槽、集合郵便受など専有部分に属さない建物の附属物、そして規約共用部分、これら3つの総称です。
前2者は、区分所有法により共用部分であると定められた部分で、法定共用部分といいます。
規約共用部分とは、専有部分になり得る建物の部分や、そのマンションに附属する別個の建物を管理規約で共用部分であると定めたものを指します。
なお、敷地は敷地であって、共用部分ではありません。敷地は、それが全区分所有者の共有であっても、上述のいずれにも該当しないためです。
法定共用部分は、いかなる手段・方法を用いても専有部分に変更することはできません。
その理由は区分所有法が定める専有部分の要件を、法定共用部分は満たすことがないためです。換言すれば、専有部分の要件を満たさない建物の部分が法定共用部分です。法定共用部分の代表的なものに躯体が挙げられますが、躯体が専有部分になり得ないことは容易に理解されるところです。
規約共用部分は、本来は共用部分ではない部分を管理規約の定めによって共用部分とするものであり、任意性がある点で法定共用部分とは大きく異なります。
規約共用部分の例としては、101号室(住戸部分)を集会室と定める、などが挙げられます。規約共用部分は任意に共用部分とするものであるため、専有部分などの本来の状態に戻すこともできます。しかし、状況によっては、法規上可能であっても現実的に不可能なケースもあります。
共用部分は誰のもの? 自由に使えるの?
法定共用部分および規約共用部分、いずれも、原則として、そのマンションの区分所有者全員の共有です。
共有者である各区分所有者は、共用部分の持分割合に関係なく、共用部分をその用法に従って使用することができます。廊下は通行する目的で、エレベータや階段は目的階への移動のために回数に制限なく使用することができます。
一方で用法に従わない使用は許されません。例えば、自転車や傘、宅配物などの物を廊下に置くことはできません。
共用部分の使用については、合理性や衡平性、妥当性があれば一定の制限を設けることができます。しかし、各区分所有者は、共用部分をその用法に従って使用する権利を持つため、使用を禁止することはできません。
制限の例としては、エレベータに自転車を載せてはならない、屋上の立入りには申請と許可を必要とする、などが挙げられます。
1階部分の区分所有者はエレベータを使用することはできない、という定めは無効です。また、用法に従った使用であっても、例えば全てのエレベータを何時間も独占するなど、他の区分所有者に著しく迷惑となるような使用は許されません。
共用部分の管理は、共有者である区分所有者が全員で行い、管理に要する費用は、共用部分の持分割合に応じて各区分所有者が負担しなければなりません。
専有部分が自由に使えない!?
区分所有権は、その専有部分を所有する権利であり、所有権の一種です。
所有権は、その対象物を直接支配する権利であることから、区分所有権を有する者(区分所有者)は、所有する専有部分を自由に使用したり処分したりすることができる、というのが原則です。
しかし、区分所有権には、その性質上、一定の場合にはそれが認められないことがあります。
これは、一棟の建物を区分し、その区分された部分(専有部分)を異なる者が所有することを認めた時点で、その建物には複数の所有者が存在することになり、建物を介して団体を構成するため、区分所有権には団体的な制約が内在するためです。
この制約により、専有部分内であっても他の区分所有者の迷惑となる行為をすることはできません。
また、区分所有者は、建物の保存に有害な行為や、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないと、区分所有法で定められており、これも専有部分内での行為や専有部分の使用方法にも適用されます。
専有部分に課せられる具体的な制約には、その用途やペット飼育の可否、楽器の演奏を認める時間帯、リフォームの実施方法などがあります。専有部分の用途とは、住宅としての使用に限定する、事務所や店舗としての使用も認めるなどです。
これらの制約は管理規約に定めますが、その制約には合理性や衡平性、妥当性が必要です。
窓ガラスや火災報知器などは誰のもの?
専有部分は建物の部分だけではなく、その部分の附属物も含みます。他方、専有部分に属さない建物の附属物は共用部分です。
自動火災報知設備の感知器などは専有部分の附属物であるので専有部分です。
しかし、この自動火災報知設備のように、感知器だけではなく、その信号を伝えるケーブルや制御装置といった共用部分に属する他の設備と構造上一体となった部分は、専有部分でありながらも、その管理は管理組合が、共用部分と一体として行うことができる定めをする、即ち各区分所有者には自由な変更などを認めないといった制約を課すことも可能です。
窓ガラスや窓枠、玄関扉は共用部分とされることが一般的で、これらを区分所有者が自由に変更することはできません。
各区分所有者は建物の外観(美観)から資産的な価値を享受していると考えられ、これらの変更は建物の外観に影響し、区分所有者の共同の利益に反する恐れがあるためです。
しかし、窓ガラスや玄関扉などの開口部は、特に防犯の面で緊急または早急に改良する必要が生じる場合があります。このような場合に備え、共用部分でありながらも各区分所有者が工事を行えるルールを予め定めておくことも必要です。
専用使用権とは
敷地や共用部分などの一部を、特定の区分所有者や第三者が排他的に使用できる権利のことです。
一般的にベランダやバルコニー、専用庭、駐車場などに設定されます。第三者に専用使用権を与える例としては、屋上に広告看板の設置を認める、などが挙げられます。
専用使用権は、共用部分などの一部を排他的に使用することができる権利ですが、物権ではなく債権的権利であるため、その部分の本来の用法に従った使用をする他の者を排除することはできません。
例えば、避難経路となっているベランダは、避難目的であれば、その部分の専用使用権を持たない他の区分所有者も使用することができます。
敷地や共用部分などは本来、共有者である全ての区分所有者がその用法に従って使用できる部分であるため、それを制限して特定の者が排他的に使用することを認めるには、共有者全員の合意が必要です。
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