管理規約と細則
管理規約と細則の重要性
管理規約や使用細則、その他の細則。その内容をしっかりと理解されていますか?
また管理組合は、適時に見直しを行っているでしょうか?
新築分譲当時のまま10年も20年も改定していない、という状態になっていないでしょうか。
管理規約や細則は「一度作れば終わり」というものではありません。
作られたルールが遵守され、きちんと運用されてはじめてその価値が生じます。また、ルールは時代の変化や組合員の加齢、入れ替わりなどにより、求められるものが変わっていきます。
「ペットの飼育は禁止」を変更して飼育を認める。またはその逆。これらは典型的な例です。
この変化を捉え、そのマンションの実情に合ったものに改定していかなければ、ルールの価値が失われます。
管理規約や細則が常に適切な状態に維持されていないと、他の組合員や居住者にとって迷惑な行為、あるいは違反と考えられる行為をする者が現れた際に、それを是正するための根拠がなく、管理組合としてなす術がない、という状況に陥ることが考えられます。
他方、区分所有者は、管理規約や細則を理解して遵守していないと、迷惑行為あるいは違反行為として、その是正を求める訴訟その他の措置がとられることもあります。
管理規約や細則の整備は、マンションに快適に暮らすために必要不可欠なことです。また、建物としての資産価値にも影響するので、そのマンションに暮らさない区分所有者にとっても決して無関係なことではなく、重要なことです。
区分所有法と管理規約の関係
マンションに関するルールには区分所有法という法律があります。
マンションを購入した人はこの法律を守らなければなりませんが、区分所有法はマンションだけを律する法律ではないため、区分所有法さえ守っていれば十分、ということにはなりません。
管理規約は、区分所有法では足りないルールを補うものです。
では、どのようなルールを定める必要があるのでしょうか。例えば専有部分の用法、役員(理事)の選出と理事会の運営など。これらは区分所有法にその定めがありません。
従って、例えば専有部分を住居専用とする定めが管理規約にない場合、店舗とすることも可能であり、その店舗のために不特定多数の人が建物内に出入りし、居住という観点での環境悪化が懸念されます。
勿論、専有部分を店舗として使用すること自体は何ら問題ありません。その用法を定めておくことがトラブルを回避する上で重要です。
専有部分の用法ひとつだけを取り上げても、マンションによってその事情は異なります。住居専用とするマンションもあれば、事務所・店舗などを認めるマンションもあります。同様にペットの飼育が可であったり不可であったり。
全てが同じというマンションはありません。
例え建物が全く同じ構造や設備を持つとしても、居住者が異なれば考え方や求めるものが異なり、事情は同じではありません。事情が異なるということは、あるマンションのルールがいくらどんなに素晴らしくとも、それをそのまま他のマンションに適用することはできない、ということです。
管理組合(区分所有者)は自分達のマンションを、トラブルのない、安全で安心な、そして快適に暮らせる住環境とするために、実状に即した管理規約を自ら制定する必要があります。
管理規約と細則の関係
駐車場、駐輪場、集会室といった設備・施設の利用方法やペット飼育などについては、大原則としてのルールを管理規約に定めた上で、個々の具体的なルールは管理規約とは別に細則として定めることが一般的です。
例えばペット飼育の可否を管理規約に定め、飼育可とする場合には具体的な動物の種類や頭数、禁止事項や違反した場合の措置などを細則に定めます。
管理規約の改定には区分所有者数および議決権数の3/4以上の賛成が必要であるため、改定は容易ではありません。これに対し細則の改定は、区分所有者数および議決権数の過半数の賛成で行うことができます。
※決議要件は管理規約で変更することができ、「総会に出席した組合員の議決権の過半数」まで緩和されていることが一般的です。
先述のペット飼育を例にとります。
飼育不可であったものを可に変更する場合、例えば動物が苦手な人に大きな影響が及びます。また、飼育可であったものを不可に変更する場合、既に飼育している人に大きな影響が及びます。
管理規約の定めは全ての区分所有者に遵守義務が生じるため、その制定・変更にあたっては慎重に議論をし、多数(3/4以上)の賛成をもって決するべきと区分所有法で定められています。
飼育可とされた場合、想定していなかった動物が飼育される、2頭までの飼育制限だが子供が生まれたので3頭まで認めて欲しいなど、飼育者の増減や時の経過などにより要望が変化することが考えられます。その要望の変化が他の区分所有者に多大な影響を及ぼす場合を除き、ルールを柔軟に変更することが望まれます。
詳細なルールを細則として定めた場合は、この柔軟な対応が可能となります。また、詳細なルールを定めておくことが区分所有者間のトラブルを未然に防ぎ、良好な居住環境の確保・維持にも繋がります。
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